【細胞間接着・総論】
・細胞は、相互に接着したり、周囲にある細胞外基質(Etracellular Matrix, ECM)とも接着する性質をもつ。
・細胞接着は組織・器官を構築するのに必要であるが、それ以外にも細胞同士のコミュニケーションや細胞外部からの情報を得るために重要な役割を果たしている。
・細胞接着分子(Cell-Adhension Molecule, CAM)は、細胞膜に局在する膜貫通性蛋白で、カドヘリンファミリー、免疫グロブリンスーパーファミリー、インテグリン、セクレチンなどのいくつかのグループに分かれている。
・細胞接着分子は、細胞間や細胞外基質との接着で得られた外部シグナルを細胞内部に伝達する。
・細胞接着分子を経て細胞内に伝達されたシグナルは、細胞内情報伝達系によって、細胞の移動・増殖・分化・物質輸送といった様々な機能に影響を与えている。
【カドヘリン】
・Caイオンを除いた培養液で胚を培養すると細胞が解離することや、それにCaイオンを加えると細胞が再集合することから、Caイオンが細胞間接着に重要な役割を果たすことが示唆されてきた。
・カドヘリンは、最初Caイオンの存在下で胚細胞同士を接着させる分子として同定された。現在ではE-カドヘリン、P-カドヘリンといった古典的カドヘリンと、デスモグレイン、デスモコリンといったデスモソーム性カドヘリンに分けられる。
・古典的カドヘリンには、上皮細胞に存在するE-カドヘリンや神経細胞に存在するN-カドヘリンなどがあり、互いに同種のものしか接着しない。
・古典的カドヘリンは、特に分化の初期において広範に発現している。
・古典的カドヘリンは、一つの膜貫通ドメイン、C-末端側の細胞内ドメイン、N-末端側の五つの細胞外カドヘリンドメインからなっている。
・カドヘリンドメインはCaイオン依存性に他細胞のカドヘリンと接着するほか、同じ細胞膜の隣り合ったカドヘリンとも結合して(側結合)、細胞間接着をより強固なものとしている。
・細胞内ドメインは、種々の介在タンパクを通じて細胞骨格であるアクチンに結合している。
・カドヘリンに作用する介在タンパクの代表はαカテニンとβカテニンである。αカテニンはアクチンと、βカテニンはカドヘリンと結合し、αカテニンとβカテニンが結合してカドヘリンとアクチンの結合に介在する。
・αカテニンとβカテニンの相互作用を抑制すると、細胞間の接着が劇的に弱くなる。腫瘍細胞の多くはαカテニンの発現が弱く、腫瘍細胞間の接着を緩めるため、特に悪性化した腫瘍の特徴である組織構築の崩壊の大きな要因と考えられている。
・βカテニンはまた細胞内伝達物質であることが知られており、カドヘリンから遊離してWnt系細胞伝達系に入って核内に移動し、転写活性を変化させる。
・細胞は、相互に接着したり、周囲にある細胞外基質(Etracellular Matrix, ECM)とも接着する性質をもつ。
・細胞接着は組織・器官を構築するのに必要であるが、それ以外にも細胞同士のコミュニケーションや細胞外部からの情報を得るために重要な役割を果たしている。
・細胞接着分子(Cell-Adhension Molecule, CAM)は、細胞膜に局在する膜貫通性蛋白で、カドヘリンファミリー、免疫グロブリンスーパーファミリー、インテグリン、セクレチンなどのいくつかのグループに分かれている。
・細胞接着分子は、細胞間や細胞外基質との接着で得られた外部シグナルを細胞内部に伝達する。
・細胞接着分子を経て細胞内に伝達されたシグナルは、細胞内情報伝達系によって、細胞の移動・増殖・分化・物質輸送といった様々な機能に影響を与えている。
【カドヘリン】
・Caイオンを除いた培養液で胚を培養すると細胞が解離することや、それにCaイオンを加えると細胞が再集合することから、Caイオンが細胞間接着に重要な役割を果たすことが示唆されてきた。
・カドヘリンは、最初Caイオンの存在下で胚細胞同士を接着させる分子として同定された。現在ではE-カドヘリン、P-カドヘリンといった古典的カドヘリンと、デスモグレイン、デスモコリンといったデスモソーム性カドヘリンに分けられる。
・古典的カドヘリンには、上皮細胞に存在するE-カドヘリンや神経細胞に存在するN-カドヘリンなどがあり、互いに同種のものしか接着しない。
・古典的カドヘリンは、特に分化の初期において広範に発現している。
・古典的カドヘリンは、一つの膜貫通ドメイン、C-末端側の細胞内ドメイン、N-末端側の五つの細胞外カドヘリンドメインからなっている。
・カドヘリンドメインはCaイオン依存性に他細胞のカドヘリンと接着するほか、同じ細胞膜の隣り合ったカドヘリンとも結合して(側結合)、細胞間接着をより強固なものとしている。
・細胞内ドメインは、種々の介在タンパクを通じて細胞骨格であるアクチンに結合している。
・カドヘリンに作用する介在タンパクの代表はαカテニンとβカテニンである。αカテニンはアクチンと、βカテニンはカドヘリンと結合し、αカテニンとβカテニンが結合してカドヘリンとアクチンの結合に介在する。
・αカテニンとβカテニンの相互作用を抑制すると、細胞間の接着が劇的に弱くなる。腫瘍細胞の多くはαカテニンの発現が弱く、腫瘍細胞間の接着を緩めるため、特に悪性化した腫瘍の特徴である組織構築の崩壊の大きな要因と考えられている。
・βカテニンはまた細胞内伝達物質であることが知られており、カドヘリンから遊離してWnt系細胞伝達系に入って核内に移動し、転写活性を変化させる。
細胞膜を介した分泌と吸収
2006年2月7日【Na-K輸送系の補足】
・高K血症のときに行うGI(Glucose-Insulin)療法は、グルコースとインスリンの投与によって細胞内へのグルコースの取り込みを活性化し、糖代謝を活性化することでATP産生を増加させる。細胞内ATP濃度増加によってNa-Kポンプが活性化し、細胞内へのKの取り込みが増加することによって、細胞外Kイオン濃度を下げる。
【細胞膜を介した分泌と吸収】
・チャネルや輸送体で運ばれない物質は膜動輸送の形で細胞内外を出入りする。
・膜動輸送は、細胞外→細胞内への輸送であるエンドサイトーシス(endocytosis)、細胞内→細胞外への輸送であるエクソサイトートス(exocytosis)に分けられる。
・エクソサイトーシスによって放出される物質は、インスリンなどのホルモン、カテコールアミンやアセチルコリンといった神経伝達物質などが主なものである。
・エクソサイトーシスは、細胞内で合成された物質が貯えられた分泌小胞が刺激によって細胞膜へ移動し、細胞膜と融合することによって内容物が外に出される。
・エクソサイトーシスで分泌される物質はゴルジ装置で小胞内に貯えられる。
・エクソサイトートスはATPを必要とするので、広義の能動輸送にあたる。したがって細胞内外の物質の濃度差には依存しない。
・エクソサイトートスを引き起こす刺激の代表的なものは細胞内Caイオン濃度の上昇である。
・シナプス小胞膜には、シナプトタグミン(synaptotagmin)というCa結合蛋白質があり、これがCaイオンと結合することで細胞外分泌が促進される。
・分泌小胞膜には、v-SNAREという蛋白質があり、目的の膜への「荷札」として機能している。標的膜上にはt-SNARE蛋白があり、v-SNARE蛋白と特異的に結合することで細胞膜と癒合する。
・シナプス小胞上のv-SNAREはシナプトブレビン(synaptobrevin)と呼ばれる。ボツリヌスB毒素の成分にはシナプトブレビンを特異的に分解するプロテアーゼがあり、これによって神経筋接合部におけるシナプス小胞が細胞膜と癒合出来なくなり、アセチルコリンの分泌が阻害される。
・エンドサイトーシスは、LDLなどの物質を取り込む飲作用と、細胞の破片や微生物などの大きな粒子を取り込む食作用に分かれる。
・取り込まれた物質はリソソームに運ばれ、そこで分解された物質が細胞内で利用される。
・エンドサイトートシスもATPを必要し、細胞内外濃度差に依存しない。
・エンドサイトーシスを行う細胞の多くは細胞膜に取り込む物質に特異的な受容体を持つ。物質と受容体の結合がエンドサイトーシスを起こす刺激になると考えられている。
・コレステロール輸送系では、肝細胞や組織細胞膜の表面にLDL受容体があり、LDLが結合するとエンドサイトーシスによってLDLを細胞内に取り込む。家族性高コレステロール血症の?a型はLDL受容体を欠き、細胞がLDLを取り込めなくなることによって起こる。
・高K血症のときに行うGI(Glucose-Insulin)療法は、グルコースとインスリンの投与によって細胞内へのグルコースの取り込みを活性化し、糖代謝を活性化することでATP産生を増加させる。細胞内ATP濃度増加によってNa-Kポンプが活性化し、細胞内へのKの取り込みが増加することによって、細胞外Kイオン濃度を下げる。
【細胞膜を介した分泌と吸収】
・チャネルや輸送体で運ばれない物質は膜動輸送の形で細胞内外を出入りする。
・膜動輸送は、細胞外→細胞内への輸送であるエンドサイトーシス(endocytosis)、細胞内→細胞外への輸送であるエクソサイトートス(exocytosis)に分けられる。
・エクソサイトーシスによって放出される物質は、インスリンなどのホルモン、カテコールアミンやアセチルコリンといった神経伝達物質などが主なものである。
・エクソサイトーシスは、細胞内で合成された物質が貯えられた分泌小胞が刺激によって細胞膜へ移動し、細胞膜と融合することによって内容物が外に出される。
・エクソサイトーシスで分泌される物質はゴルジ装置で小胞内に貯えられる。
・エクソサイトートスはATPを必要とするので、広義の能動輸送にあたる。したがって細胞内外の物質の濃度差には依存しない。
・エクソサイトートスを引き起こす刺激の代表的なものは細胞内Caイオン濃度の上昇である。
・シナプス小胞膜には、シナプトタグミン(synaptotagmin)というCa結合蛋白質があり、これがCaイオンと結合することで細胞外分泌が促進される。
・分泌小胞膜には、v-SNAREという蛋白質があり、目的の膜への「荷札」として機能している。標的膜上にはt-SNARE蛋白があり、v-SNARE蛋白と特異的に結合することで細胞膜と癒合する。
・シナプス小胞上のv-SNAREはシナプトブレビン(synaptobrevin)と呼ばれる。ボツリヌスB毒素の成分にはシナプトブレビンを特異的に分解するプロテアーゼがあり、これによって神経筋接合部におけるシナプス小胞が細胞膜と癒合出来なくなり、アセチルコリンの分泌が阻害される。
・エンドサイトーシスは、LDLなどの物質を取り込む飲作用と、細胞の破片や微生物などの大きな粒子を取り込む食作用に分かれる。
・取り込まれた物質はリソソームに運ばれ、そこで分解された物質が細胞内で利用される。
・エンドサイトートシスもATPを必要し、細胞内外濃度差に依存しない。
・エンドサイトーシスを行う細胞の多くは細胞膜に取り込む物質に特異的な受容体を持つ。物質と受容体の結合がエンドサイトーシスを起こす刺激になると考えられている。
・コレステロール輸送系では、肝細胞や組織細胞膜の表面にLDL受容体があり、LDLが結合するとエンドサイトーシスによってLDLを細胞内に取り込む。家族性高コレステロール血症の?a型はLDL受容体を欠き、細胞がLDLを取り込めなくなることによって起こる。
CBT こあかりオリエンテーション
2006年2月7日 読書
本blogは、医学部4回生である私が、画像にある
CBT こあかりオリエンテーション(医学評論社)
を元にして、CBT/OSCEの元である医学教育モデル・コアカリキュラムの内容の勉強をしていった記録を掲載していくものです。
現在勉強自体は一通り済みましたが、復習も兼ねて電子化しようと思い立ち、本Blogを立ち上げました。
勉強は、この本を軸にして成書で内容を充実させていく形式を取っています。現在細胞生物の範囲ですが、成書の出典は
Harper’s Illustrated Biochemistry(26th ed.)
Molecular Cell Biology(5th ed.)
Harrison’s Principles of Internal Medicine(16th ed.)
あたりがメインです。
ISBN:487211700X 単行本 松田 重三 医学評論社 2005/12 ¥5,250
CBT こあかりオリエンテーション(医学評論社)
を元にして、CBT/OSCEの元である医学教育モデル・コアカリキュラムの内容の勉強をしていった記録を掲載していくものです。
現在勉強自体は一通り済みましたが、復習も兼ねて電子化しようと思い立ち、本Blogを立ち上げました。
勉強は、この本を軸にして成書で内容を充実させていく形式を取っています。現在細胞生物の範囲ですが、成書の出典は
Harper’s Illustrated Biochemistry(26th ed.)
Molecular Cell Biology(5th ed.)
Harrison’s Principles of Internal Medicine(16th ed.)
あたりがメインです。
ISBN:487211700X 単行本 松田 重三 医学評論社 2005/12 ¥5,250
細胞膜の物質の出入り(2)
2006年2月7日-輸送系・各論-
【促進拡散】
・輸送体蛋白を介して電気化学的勾配に従って行われる輸送である。
・単純拡散と違い、拡散される物質は輸送体しか通過できないので拡散部位に限りがある。そのため濃度勾配が強くなっても拡散速度には限界がある。
・促進拡散の速度曲線は一般に単純な酵素反応速度特性を示し、単純拡散の速度を上回る。
・促進拡散の代表はグルコース輸送体であるGLUTファミリーである。ほとんどの細胞はGLUT1を発現しており、細胞外から栄養源であるグルコースを細胞内に取り入れる機能をもつ。
・GLUT2は肝細胞および膵頭β細胞で発現し、GLUT1に比べ高いグルコース輸送能を持つ。このためこれらの細胞のグルコース吸収能力は高く、肝では過剰グルコースを取り込みグリコーゲンを合成するのに、膵頭β細胞では血糖値の変化を鋭敏にとらえることに役立っている。
・GLUT4は脂肪細胞や筋細胞に分布するインスリン応答性のグルコース輸送体である。普段は細胞内の膜上に存在するが、インスリンの刺激によって細胞膜と融合し細胞表面に出てグルコース取り込み能を増加させる。この過程に異常が生じると糖尿病の原因となる。
【能動輸送】
・ATPのエネルギーを使い、濃度勾配に逆らってイオンや低分子を輸送する。これを行うのはATP依存性ポンプである。
・ATP依存性ポンプは、さらにイオンを通過させるものとイオン以外の低分子を通過させる(ABCスーパーファミリー)に大別される。
・Na-Kポンプは、ATPのエネルギーを利用して、3個のNaイオンを細胞外から細胞内へ、2個のKイオンを細胞内から細胞外へ輸送する。これによってNa,Kイオンの濃度勾配が維持されている。
・Na-Kポンプで形成されたNa濃度勾配は生理的に重要である。神経細胞では興奮によってNaチャネルが開口しNaイオンが濃度勾配に従って流入することが脱分極に大きく寄与する。また、Naイオンが細胞内流入するときの自由エネルギー変化は負である(ΔG=-3.06kcal/mol)。このエネルギー変化を利用して、他のイオンや低分子の輸送が行われることがあり、これを二次性能動輸送という。
・Na-グルコース共輸送系は2分子のNaを細胞内に取り込む際に生じたエネルギー変化を利用して一分子のグルコースを細胞内に取り込む。理論上、2個のNaイオンを取り込むことによって細胞内部のグルコース濃度は外部より30000倍高くできる(Naイオン1個だと170倍)。そのためこの系は、かなり大きな濃度勾配に逆らってグルコースを吸収する細胞、具体的には小腸上皮や腎尿細管に存在する。
・3Na/Ca対向輸送体は心筋細胞膜にあり、3個のNaイオンを取り込み1個のCaイオンを排出する。これによって心筋細胞質のCaイオン濃度は低く保たれている。ウワバインやジコキシンはNa/Kポンプを阻害してNaイオンの濃度勾配を下げることにより、3Na/Ca対向輸送体によるCaイオンの排出を抑え細胞内Caイオン濃度を高く保つ事によって心筋の収縮力を増す。
・筋肉のCaポンプは筋小胞体上に存在し、SERCAと呼ばれる。SERCAは筋小胞体内へCaイオンを取り込み、筋小胞体のCaイオンの貯蔵に役立っている。
・ABCスーパーファミリーの代表は多剤耐性輸送蛋白質(multidrug-resistance(MDR) tranport protein)である。薬剤耐性を得た細胞ではMDR1蛋白が過剰発現しており、細胞内に吸収された薬物を細胞外に排出する。
・ABCD1はペルオキシソーム上に存在し、分子量の大きい脂肪酸をペルオキシソームに取り込み分解させる働きを持つ。このポンプが欠損が生じると高分子量脂肪酸が細胞質内に蓄積し毒性を示す。これがX-linked adrenoleukodystrophy(ALD)の原因である。
・ABCA1は細胞膜でリン脂質やコレステロールを輸送する。このポンプが欠損するとタンジール病(Tangier’s disease)の原因となる。
【促進拡散】
・輸送体蛋白を介して電気化学的勾配に従って行われる輸送である。
・単純拡散と違い、拡散される物質は輸送体しか通過できないので拡散部位に限りがある。そのため濃度勾配が強くなっても拡散速度には限界がある。
・促進拡散の速度曲線は一般に単純な酵素反応速度特性を示し、単純拡散の速度を上回る。
・促進拡散の代表はグルコース輸送体であるGLUTファミリーである。ほとんどの細胞はGLUT1を発現しており、細胞外から栄養源であるグルコースを細胞内に取り入れる機能をもつ。
・GLUT2は肝細胞および膵頭β細胞で発現し、GLUT1に比べ高いグルコース輸送能を持つ。このためこれらの細胞のグルコース吸収能力は高く、肝では過剰グルコースを取り込みグリコーゲンを合成するのに、膵頭β細胞では血糖値の変化を鋭敏にとらえることに役立っている。
・GLUT4は脂肪細胞や筋細胞に分布するインスリン応答性のグルコース輸送体である。普段は細胞内の膜上に存在するが、インスリンの刺激によって細胞膜と融合し細胞表面に出てグルコース取り込み能を増加させる。この過程に異常が生じると糖尿病の原因となる。
【能動輸送】
・ATPのエネルギーを使い、濃度勾配に逆らってイオンや低分子を輸送する。これを行うのはATP依存性ポンプである。
・ATP依存性ポンプは、さらにイオンを通過させるものとイオン以外の低分子を通過させる(ABCスーパーファミリー)に大別される。
・Na-Kポンプは、ATPのエネルギーを利用して、3個のNaイオンを細胞外から細胞内へ、2個のKイオンを細胞内から細胞外へ輸送する。これによってNa,Kイオンの濃度勾配が維持されている。
・Na-Kポンプで形成されたNa濃度勾配は生理的に重要である。神経細胞では興奮によってNaチャネルが開口しNaイオンが濃度勾配に従って流入することが脱分極に大きく寄与する。また、Naイオンが細胞内流入するときの自由エネルギー変化は負である(ΔG=-3.06kcal/mol)。このエネルギー変化を利用して、他のイオンや低分子の輸送が行われることがあり、これを二次性能動輸送という。
・Na-グルコース共輸送系は2分子のNaを細胞内に取り込む際に生じたエネルギー変化を利用して一分子のグルコースを細胞内に取り込む。理論上、2個のNaイオンを取り込むことによって細胞内部のグルコース濃度は外部より30000倍高くできる(Naイオン1個だと170倍)。そのためこの系は、かなり大きな濃度勾配に逆らってグルコースを吸収する細胞、具体的には小腸上皮や腎尿細管に存在する。
・3Na/Ca対向輸送体は心筋細胞膜にあり、3個のNaイオンを取り込み1個のCaイオンを排出する。これによって心筋細胞質のCaイオン濃度は低く保たれている。ウワバインやジコキシンはNa/Kポンプを阻害してNaイオンの濃度勾配を下げることにより、3Na/Ca対向輸送体によるCaイオンの排出を抑え細胞内Caイオン濃度を高く保つ事によって心筋の収縮力を増す。
・筋肉のCaポンプは筋小胞体上に存在し、SERCAと呼ばれる。SERCAは筋小胞体内へCaイオンを取り込み、筋小胞体のCaイオンの貯蔵に役立っている。
・ABCスーパーファミリーの代表は多剤耐性輸送蛋白質(multidrug-resistance(MDR) tranport protein)である。薬剤耐性を得た細胞ではMDR1蛋白が過剰発現しており、細胞内に吸収された薬物を細胞外に排出する。
・ABCD1はペルオキシソーム上に存在し、分子量の大きい脂肪酸をペルオキシソームに取り込み分解させる働きを持つ。このポンプが欠損が生じると高分子量脂肪酸が細胞質内に蓄積し毒性を示す。これがX-linked adrenoleukodystrophy(ALD)の原因である。
・ABCA1は細胞膜でリン脂質やコレステロールを輸送する。このポンプが欠損するとタンジール病(Tangier’s disease)の原因となる。
細胞膜の物質の出入り(imcompleted)
2006年2月3日コメント (2)【単純拡散】
・脂溶性物質(脂質、ステロイド、エタノール)は脂質二重膜を単純拡散する。
・酸素、二酸化炭素も極性がないので脂質二重膜を単純拡散する。
・極性のあるものでも小分子量のもの(水、尿素)は通過することは可能である。
【チャネルによる拡散】
・イオンチャネルは脂質二重膜を透過できない物質を選択的・特異的に受動輸送させる。
・イオンチャネルの小孔(pore)は親水性であり、開閉機構(gate)を持つ。
・開閉機構は電位によるもの、リガンドの結合によるもの、物理的圧力によるものなどがある。
・イオンチャネルをイオンが透過するための駆動力は、細胞内外のイオン濃度差およびそれによって生じる電位差による。これを電気化学ポテンシャルという。
・水は通常細胞膜を拡散するが、赤血球や腎臓の集合管ではこれに加えて水チャネル(aquaporin)があり、水の移行を増強している。
【輸送系】
・一種類の分子を両方向に移動させる系を単輸送(uniport)という。
・二種類の物質を同時に同じ方向に移動させる系を共輸送(symport)という。
・哺乳動物の腸では、糖の吸収はNaイオンとの共輸送である。
・二種類の物質を同時に違う方向に移動させる系を対向輸送(antiport)という。
・脂質二重膜を容易に通過できない物質は輸送体蛋白質(carrier protein)を介して細胞膜を行き来する。これには促進拡散(facilitated diffusion)と能動輸送(active transport)の二つの系が知られている。
・脂溶性物質(脂質、ステロイド、エタノール)は脂質二重膜を単純拡散する。
・酸素、二酸化炭素も極性がないので脂質二重膜を単純拡散する。
・極性のあるものでも小分子量のもの(水、尿素)は通過することは可能である。
【チャネルによる拡散】
・イオンチャネルは脂質二重膜を透過できない物質を選択的・特異的に受動輸送させる。
・イオンチャネルの小孔(pore)は親水性であり、開閉機構(gate)を持つ。
・開閉機構は電位によるもの、リガンドの結合によるもの、物理的圧力によるものなどがある。
・イオンチャネルをイオンが透過するための駆動力は、細胞内外のイオン濃度差およびそれによって生じる電位差による。これを電気化学ポテンシャルという。
・水は通常細胞膜を拡散するが、赤血球や腎臓の集合管ではこれに加えて水チャネル(aquaporin)があり、水の移行を増強している。
【輸送系】
・一種類の分子を両方向に移動させる系を単輸送(uniport)という。
・二種類の物質を同時に同じ方向に移動させる系を共輸送(symport)という。
・哺乳動物の腸では、糖の吸収はNaイオンとの共輸送である。
・二種類の物質を同時に違う方向に移動させる系を対向輸送(antiport)という。
・脂質二重膜を容易に通過できない物質は輸送体蛋白質(carrier protein)を介して細胞膜を行き来する。これには促進拡散(facilitated diffusion)と能動輸送(active transport)の二つの系が知られている。
【構造】
・厚さ数nmの脂質二重膜からなる。
・脂質はリン脂質であり、親水性のリン酸化合物を膜表面に、疎水性の脂肪酸を膜内に向けている。
・リン脂質はグリセリンの1,2位の水酸基に脂肪酸、3位の水酸基にリン酸がエステル結合し、さらにコリンやセリンなどが結合したものである。
・コレステロールも細胞膜の成分となり、細胞膜に堅さを与えている。
・細胞膜には種々の蛋白質が膜表面に付着したり、膜を貫通したりしてある。これらの蛋白質は脂質二重膜の中を自由に移動できる(流動モザイクモデル)。
・細胞膜蛋白質の中で機能的に重要なものには、イオンチャネルや輸送体、受容体、細胞骨格系の蛋白質がある。
【機能】
・脂質が含まれるため、水溶性の物質は細胞膜を透過できない。これによって細胞外液と細胞内液の交通を遮断し、細胞内環境の維持を図っている。
・細胞膜を透過できない物質は、細胞膜蛋白であるイオンチャネルや輸送体(キャリア蛋白)の中を透過する。イオンチャネルや輸送体は、様々な刺激によって開閉し、通過する物質はその種類に特異的である。これによって細胞内外の物質の出入りを調整し、さまざまな機能の発現を制御する。
・イオンチャネルや輸送体の中を物質が通過するのは濃度勾配による拡散のためであるが、輸送体の中には、ATPを消費しエネルギーを得ることで濃度勾配に逆らって物質を輸送する(能動輸送)ものが存在する。これらは一般にポンプと呼ばれる。
・受容体は細胞外部で特定の分子(リガンド)と結合し、それが刺激となって細胞内で一定の反応を引き起こす。受容体自身がイオンチャネルとして働き、リガンドの結合によってイオンの透過性を変えることで反応を引き起こす場合、また受容体分子の一部が酵素として機能し、リガンドの結合によって酵素活性が上がり細胞内伝達物質(セカンドメッセンジャー)を合成することで反応を引き起こす場合などがある。受容体によって、細胞は外部の刺激の変化に対して細胞内部でさまざまな反応を引き起こすことを可能にする。
・細胞骨格は膜の両側で大きな分子を固定し、細胞の運動や形態の維持、細胞間の接着などを司る。
・厚さ数nmの脂質二重膜からなる。
・脂質はリン脂質であり、親水性のリン酸化合物を膜表面に、疎水性の脂肪酸を膜内に向けている。
・リン脂質はグリセリンの1,2位の水酸基に脂肪酸、3位の水酸基にリン酸がエステル結合し、さらにコリンやセリンなどが結合したものである。
・コレステロールも細胞膜の成分となり、細胞膜に堅さを与えている。
・細胞膜には種々の蛋白質が膜表面に付着したり、膜を貫通したりしてある。これらの蛋白質は脂質二重膜の中を自由に移動できる(流動モザイクモデル)。
・細胞膜蛋白質の中で機能的に重要なものには、イオンチャネルや輸送体、受容体、細胞骨格系の蛋白質がある。
【機能】
・脂質が含まれるため、水溶性の物質は細胞膜を透過できない。これによって細胞外液と細胞内液の交通を遮断し、細胞内環境の維持を図っている。
・細胞膜を透過できない物質は、細胞膜蛋白であるイオンチャネルや輸送体(キャリア蛋白)の中を透過する。イオンチャネルや輸送体は、様々な刺激によって開閉し、通過する物質はその種類に特異的である。これによって細胞内外の物質の出入りを調整し、さまざまな機能の発現を制御する。
・イオンチャネルや輸送体の中を物質が通過するのは濃度勾配による拡散のためであるが、輸送体の中には、ATPを消費しエネルギーを得ることで濃度勾配に逆らって物質を輸送する(能動輸送)ものが存在する。これらは一般にポンプと呼ばれる。
・受容体は細胞外部で特定の分子(リガンド)と結合し、それが刺激となって細胞内で一定の反応を引き起こす。受容体自身がイオンチャネルとして働き、リガンドの結合によってイオンの透過性を変えることで反応を引き起こす場合、また受容体分子の一部が酵素として機能し、リガンドの結合によって酵素活性が上がり細胞内伝達物質(セカンドメッセンジャー)を合成することで反応を引き起こす場合などがある。受容体によって、細胞は外部の刺激の変化に対して細胞内部でさまざまな反応を引き起こすことを可能にする。
・細胞骨格は膜の両側で大きな分子を固定し、細胞の運動や形態の維持、細胞間の接着などを司る。