【細胞間接着・総論】

・細胞は、相互に接着したり、周囲にある細胞外基質(Etracellular Matrix, ECM)とも接着する性質をもつ。
・細胞接着は組織・器官を構築するのに必要であるが、それ以外にも細胞同士のコミュニケーションや細胞外部からの情報を得るために重要な役割を果たしている。

・細胞接着分子(Cell-Adhension Molecule, CAM)は、細胞膜に局在する膜貫通性蛋白で、カドヘリンファミリー、免疫グロブリンスーパーファミリー、インテグリン、セクレチンなどのいくつかのグループに分かれている。
・細胞接着分子は、細胞間や細胞外基質との接着で得られた外部シグナルを細胞内部に伝達する。
・細胞接着分子を経て細胞内に伝達されたシグナルは、細胞内情報伝達系によって、細胞の移動・増殖・分化・物質輸送といった様々な機能に影響を与えている。

【カドヘリン】
・Caイオンを除いた培養液で胚を培養すると細胞が解離することや、それにCaイオンを加えると細胞が再集合することから、Caイオンが細胞間接着に重要な役割を果たすことが示唆されてきた。
・カドヘリンは、最初Caイオンの存在下で胚細胞同士を接着させる分子として同定された。現在ではE-カドヘリン、P-カドヘリンといった古典的カドヘリンと、デスモグレイン、デスモコリンといったデスモソーム性カドヘリンに分けられる。

・古典的カドヘリンには、上皮細胞に存在するE-カドヘリンや神経細胞に存在するN-カドヘリンなどがあり、互いに同種のものしか接着しない。
・古典的カドヘリンは、特に分化の初期において広範に発現している。
・古典的カドヘリンは、一つの膜貫通ドメイン、C-末端側の細胞内ドメイン、N-末端側の五つの細胞外カドヘリンドメインからなっている。

・カドヘリンドメインはCaイオン依存性に他細胞のカドヘリンと接着するほか、同じ細胞膜の隣り合ったカドヘリンとも結合して(側結合)、細胞間接着をより強固なものとしている。
・細胞内ドメインは、種々の介在タンパクを通じて細胞骨格であるアクチンに結合している。

・カドヘリンに作用する介在タンパクの代表はαカテニンとβカテニンである。αカテニンはアクチンと、βカテニンはカドヘリンと結合し、αカテニンとβカテニンが結合してカドヘリンとアクチンの結合に介在する。
・αカテニンとβカテニンの相互作用を抑制すると、細胞間の接着が劇的に弱くなる。腫瘍細胞の多くはαカテニンの発現が弱く、腫瘍細胞間の接着を緩めるため、特に悪性化した腫瘍の特徴である組織構築の崩壊の大きな要因と考えられている。

・βカテニンはまた細胞内伝達物質であることが知られており、カドヘリンから遊離してWnt系細胞伝達系に入って核内に移動し、転写活性を変化させる。

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